救命にエボラが来たら——未知の脅威への備え型
コード・ブルー

【コード・ブルー】救命に「エボラ」が来たら?——"未知の脅威への備え"型・存在しない敵を想定する技術

『コード・ブルー』が問いかけた「もしエボラ患者が救命に来たら」のシナリオ。まだ目の前にない敵を想定して備える技術は、感染症対策に限らず、看護師人生全体のリスク管理に通じます。「想定しすぎ」と「想定不足」のあいだで、現場はどう構えるべきか。現役26年の看護師が「未知の脅威への備え型」として、存在しない敵を想定する4つの作法を整理します。

この記事の結論(カルテ)

  • 対象作品:『コード・ブルー』エボラ等の感染症対応エピソード
  • 事象:日本でほとんど出会わない感染症が、ある日突然救命に来る可能性
  • 本質:未知の脅威への備えは、起こる確率ではなく起きたときの影響で判断する
  • 看護師人生への応用:感染症だけでなく、過労・パワハラ・家族の病・自分の病など、未知の脅威は人生にもある
  • 備えの4作法:シミュレーション/物資の確保/撤退基準/心の備え
  • 読者への問い:あなたは「まだ起きていないこと」をどれくらい想定して動いていますか?

問診室:「日本ではあり得ない」が一番危ない

『コード・ブルー』のあるエピソードで、医師たちが「もしエボラ患者が来たら、ここ(救命)はどう動く?」と議論する場面があります。エボラは日本ではほとんど発生しない感染症で、現場のスタッフからすれば「あり得ない話」に聞こえる。けれど2014年の西アフリカでの流行、2020年の新型コロナの世界的パンデミックを経て、「日本ではあり得ない」が一番危ない言葉だったことが分かりました。未知の脅威への備えは、起こる確率ではなく起きたときの影響で判断する必要があります。

あのエピソードを観たとき、まだ「現実的じゃない話」って感覚あった。けど新型コロナを経験してから、「あり得ない」って思考停止が一番危ないって身に染みた。

新型コロナの初期、防護服も足りなくて、現場が本当に混乱しましたよね。あれって「備えがなかった」事故だったんですね。

備えてなかったのは個人じゃなくて社会全体。「起こらないだろう」で省いたものは、起きた瞬間に致命的になる。これは医療だけじゃなくて、看護師個人の人生にも同じ構造がある。

そこが今回のテーマです。「未知の脅威への備え型」は、感染症対応の技術であると同時に、看護師個人のキャリアと人生のリスク管理にも応用できる視点です。「起こる確率」ではなく「起きたときの影響」で判断する作法を整理します。

回診記録①:「想定する人」と「想定しない人」

現場でも個人でも、未知の脅威を想定する人としない人の差は、事が起きた瞬間に動けるかどうかに直結します。想定している人は「来た、想定通り、〇〇する」と動けるが、想定していない人は「まさか」「えっ」「どうしよう」で時間を失う。日常では差が見えませんが、いざというときに差は致命的になります。

✅ 想定する人

「起こったらこうする」を頭の中で何度もリハーサル/物資と手順を準備/撤退基準も持つ/いざという時に即動ける

❌ 想定しない人

「起こらない」と思考停止/物資も手順も未整備/撤退判断ができない/いざという時に固まる

「リハーサル」って大袈裟に聞こえるけど、頭の中でシミュレーションするだけでも備えになりますか?

むしろ頭の中のリハーサルが一番大事。「もし〇〇が起きたら、最初に何をするか」を口に出して言える人が、いざという時に動ける。これは個人レベルでも今日からできる訓練。

シミュレーションは脳科学的にも実行と同等の効果が確認されています。アスリートも本番前にイメージトレーニングをしますが、これは脳が「実行した記憶」を作ることで、本番の判断速度と精度を上げる技術です。看護師の備えも全く同じ原理です。

回診記録②:未知の脅威を5カテゴリで点検する

未知の脅威といっても漠然としすぎていると備えようがありません。感染症・大規模災害・テロ・サイバー・個人事情の5カテゴリで分けると、それぞれに「もし起きたら」のシナリオが具体化できます。看護師個人としては、最後の「個人事情」が特に重要です。

カテゴリ想定すべきシナリオ
感染症新興・再興感染症の流入/院内感染の拡大
大規模災害地震・水害・大火災での多数傷病者搬入
テロ・事件多数傷病者搬入/院内不審者対応
サイバー電子カルテ停止/検査機器停止
個人事情自分が病気になる/家族が倒れる/介護が始まる

「電子カルテ停止」って、想像したことなかったです。手書きで業務を回す訓練、今やってないですよね。

世界各地でランサムウェアで電子カルテが止まる事案、増えてる。日本の病院でも起きてる。「あり得ない」で済ませた瞬間、現場が立ち止まる。最低限、紙の代替フォーマットだけは確保しておきたい。

個人事情のカテゴリは特に重要です。自分が病気になる、家族が倒れる、親の介護が始まる——これらは「いつか必ず起きる未知の脅威」です。看護師人生の半ばで、ここの備えがあるかどうかが分かれ目になります。

回診記録③:「撤退基準」をあらかじめ決めておく

未知の脅威への備えで一番見落とされがちなのが、「撤退基準」です。「ここまで来たら撤退する」「ここを越えたら無理しない」を平時に決めておく。これがないと、いざという時に「頑張れる限り頑張ってしまい」、結果として自分が崩れます。コード・ブルーの劇中でも、撤退判断の重要性は何度も描かれています。

新型コロナ初期、防護服が足りないのに、現場が「頑張るしかない」で押し続けて、感染した同僚が何人もいた。あれは撤退基準がなかった事故。「マスクなしでは入らない」って線が引けてれば、被害は減らせた。

個人の人生でも、撤退基準ってあった方がいいですか?

絶対あった方がいい。「体重が3か月で5キロ落ちたら離れる」「3か月連続で月100時間残業なら離れる」みたいに数字で線を引いておく。これがあると感情に流されずに判断できる。

撤退基準は、自分の弱さを認める道具ではなく、自分を未来から守る道具です。脅威の最中に判断すると感情に流されますが、平時に決めた基準なら冷静に従えます。これは個人・組織すべてのリスク管理の核です。

【本日の処方箋】未知の脅威に備える4つの作法

ここまで整理した「想定する/しない」「5カテゴリ」「撤退基準」を踏まえて、現場と個人で実践できる4つの作法をまとめます。今日から始められる、リスク管理の基礎訓練です。

  1. シミュレーションする:「もし〇〇が起きたら、最初に何をするか」を口に出して言えるようにする。月1回、想定外シナリオを1つ選んで頭の中で予行演習する。
  2. 物資を確保する:マスク・防護具・現金・水・食料の備蓄を「3日分」最低限揃える。個人レベルでも、家庭レベルでも。職場でも自分の更衣室ロッカーに最低限のセットを置く。
  3. 撤退基準を決める:体重・残業時間・睡眠時間など、数字で撤退基準を決める。平時に決めて、脅威が来たら基準に従う。感情ではなく数字で判断する。
  4. 心の備えを持つ:「最悪の場合どうなるか」を一度だけ言語化して、ノートに書く。これだけで実際に起きたときのショックが半分以下になる。

「最悪の場合を一度だけ言語化」って、ネガティブに見えてポジティブな作業なんですね。

そう、言語化したら脳は「対処可能なもの」として受け取る。漠然とした不安は最大の敵で、言語化された不安は対処の対象になる。これは心理学的にも確認されている技術。

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よくある質問

「未知の脅威への備え型」とは何ですか?

まだ目の前にない敵(感染症・災害・個人事情など)を想定して、シミュレーション・物資・撤退基準・心の備えの4作法で構造的に備える型です。判断基準は「起こる確率」ではなく「起きたときの影響」。新型コロナで「あり得ない」が最も危ない言葉だったことが証明された後の標準的リスク管理視点です。

想定する人としない人の差は何ですか?

事が起きた瞬間に動けるかどうかの差です。想定している人は「来た、想定通り、〇〇する」と即動けますが、想定していない人は「まさか」「えっ」「どうしよう」で時間を失います。日常では差が見えませんが、いざという時に致命的になります。

未知の脅威5カテゴリとは?

①感染症(新興・再興感染症の流入)、②大規模災害(地震・水害・火災)、③テロ・事件(多数傷病者・院内不審者)、④サイバー(電子カルテ停止・検査機器停止)、⑤個人事情(自分や家族の病気・介護開始)。看護師個人にとっては最後の「個人事情」が特に重要です。

撤退基準とは何ですか?

「ここまで来たら撤退する」「ここを越えたら無理しない」を平時に決めておく数値基準です。体重・残業時間・睡眠時間などで具体的に線を引きます。新型コロナ初期に多くの看護師が感染したのは、撤退基準がなかったことが構造的要因です。感情ではなく数字で判断する道具です。

未知の脅威に備える4つの作法は?

①シミュレーション(月1回想定外シナリオを頭の中で予行演習)、②物資確保(マスク・防護具・現金・水・食料を3日分)、③撤退基準を決める(数字で平時に決める)、④心の備え(最悪の場合を一度だけ言語化してノートに書く)。これだけで実際に起きたときのショックが半分以下になります。

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