明治の看護婦と現代の看護師の制服を対比したイメージ
風、薫る

【風、薫る】明治の看護婦に「辞める自由」はなかった。令和のナースが退職を選べる意味

NHK朝ドラ『風、薫る』を観ていると気づくことがあります。明治の看護婦たちには、職場を「辞める自由」が実質的にありませんでした。養成所と病院、寄宿舎、住み込みの派出看護——生活そのものが職場と一体だったからです。137年後の私たちは「退職の自由」を法律で保障されています。それなのに、なぜ今も「辞められない」と感じるのか。看護師が、歴史と現在をつなげて考えます。

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この記事の結論(カルテ)

  • 明治の看護婦は養成所・寄宿舎・住み込み派出という「生活=職場」の構造の中にいた
  • 「辞める」は職業だけでなく住まいと身分を同時に失うことを意味した
  • 令和の今、退職の自由は憲法22条(職業選択の自由)と民法627条で守られている
  • 法律上は「2週間前の申し出」で退職できる。就業規則より法律が優先
  • それでも辞められないのは「制度」ではなく「情の圧力」と「人手不足の罪悪感」のせい
  • 先人が勝ち取った自由を使うことは、裏切りではなく継承

問診室:朝ドラの中の「辞められなさ」に気づいていますか

『風、薫る』のヒロインたちは、看護婦養成所で学び、寄宿舎で暮らし、派出先の家に住み込んで働きます。ここで立ち止まって考えてほしいのです。彼女たちが「この仕事を辞めたい」と思ったら、どうなったでしょうか

あっ……。寄宿舎に住んでいるから、辞めたら住む場所がなくなるんですね。派出先に住み込みなら、なおさら。

そう。明治の看護婦にとって、仕事は「生活・住まい・身分」と一体だった。しかも女性が一人で生計を立てられる職業自体が数えるほどしかない時代。「辞める」という選択肢は、制度としても経済としても、ほぼ存在しなかったんだ。

今回のカンファレンスのテーマは「退職の自由の137年」です。明治の看護婦が持てなかったもの、大正・昭和の先輩たちが少しずつ勝ち取ってきたもの、そして令和の私たちが「持っているのに使えていないもの」。この3つを順番に見ていきます。

回診記録①:明治の看護婦の「生活=職場」構造

項目明治の看護婦令和の看護師
住まい寄宿舎・派出先に住み込みが基本自宅から通勤(寮があっても任意)
労働時間付き添い看護は実質24時間。休日の概念が薄い労働基準法で規制(夜勤・残業に上限と手当)
辞める自由実質なし(住まい・身分・収入を同時に失う)憲法22条・民法627条で保障
転職市場存在しない(働き口は限られ、紹介は人脈頼み)全国に求人があり、資格は全国で通用する
女性の職業看護婦は数少ない「自立できる職業」だった選択肢は無数。看護師資格は「戻れる場所」にもなる

大事なのは、明治の看護婦たちが「我慢強かった」から辞めなかったんじゃないということ。辞められない構造の中にいたんだ。逆に言えば、あの時代に看護婦になるという選択は、それだけの覚悟と引き換えに「女性が自分の稼ぎで生きる」道を手に入れる、ほとんど唯一の方法だった。

回診記録②:137年かけて手に入れた「退職の自由」

今の私たちが当たり前に持っている権利を、法律の言葉で確認しておきます。知識は、情の圧力への抵抗力になります

法律ではそんなにはっきり守られてるんですね……。でも実際は、「人手が足りないのに辞めるの?」「患者さんはどうするの?」って言われたら、動けなくなっちゃう気がします。

それが令和の「辞められなさ」の正体。明治は制度が辞めさせなかった。令和は情と罪悪感が辞めさせない。でもはっきり言うよ。人員配置は経営の仕事で、あなたの仕事じゃない。あなたが辞めて職場が回らなくなるなら、それはあなたが辞めるせいじゃなくて、一人抜けたら回らない体制にしていた組織の問題なんだ。

回診記録③:「辞める」を選ぶことは、先人への裏切りか

看護の歴史を知ると、逆に「先人があんなに苦労して築いた仕事を、私は辞めようとしている」と罪悪感を覚える人がいます。26年現場にいた看護師として、これだけは伝えたい。それは逆です

大関和たち明治の看護婦が闘って手に入れようとしたのは、「看護婦が使い潰されない世界」です。看護婦規則の制定に奔走したのは、看護婦の身分と労働条件を守るためでした。心身を壊してまで一つの職場にしがみつくことは、先人の望んだ看護師の姿ではありません。壊れる前に環境を変えて、長く看護を続けること。それこそが継承です。

「辞める自由」は、使わなくても持っているだけで人を強くする権利です。「いざとなれば動ける」と知っている人は、今日の理不尽に折れにくい。だからこの記事は「辞めましょう」ではなく「自由を思い出しましょう」という記事です。

【本日の処方箋】「辞める自由」を思い出す3ステップ

  1. 法律の言葉を1つ覚える:「民法627条・退職の申し出から2週間」。これだけで「辞めさせてもらえない」という思い込みから自由になれます。
  2. 「情の圧力」と「自分の健康」を天秤に載せる:師長の困る顔と、あなたの眠れない夜。どちらを守るべきかは、明治の先人たちなら迷わず答えるはずです。
  3. 動けないほど消耗しているなら、第三者を挟む:直接言い出せない状態は、甘えではなく消耗のサインです。退職代行という「盾」を使う選択肢があります。相談だけなら無料です。

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よくある質問

明治の看護婦は本当に辞められなかったのですか?

法律で禁止されていたわけではありませんが、寄宿舎や住み込みという「生活=職場」の構造、女性が自立できる職業の少なさ、人脈頼みの就職事情から、実質的に「辞める」という選択肢を持ちにくい状況でした。

「2週間で退職できる」は看護師にも当てはまりますか?

期間の定めのない雇用契約(正職員)であれば、民法627条により退職の申し出から2週間で雇用契約は終了します。看護師も例外ではありません。ただし円満退職を目指すなら就業規則の予告期間(1〜3ヶ月前など)に沿う方がスムーズな場合もあります。どちらを選ぶかは、あなたの心身の状態次第です。

「後任が見つかるまで辞めるな」と言われたら?

後任の確保は雇用主(経営側)の責任であり、退職を制限する法的な理由にはなりません。労働基準法5条は意思に反する労働の強制を禁止しています。話し合いが成立しない場合は、労働組合運営や弁護士監修の退職代行など、第三者を挟む方法があります。

朝ドラ『風、薫る』はどんなドラマですか?

NHK連続テレビ小説第114作。日本初のトレインドナース(正規看護師)である大関和と鈴木雅をモチーフに、明治時代に「看護」の世界に飛び込んだ2人の女性の成長を描きます。主演は見上愛さんと上坂樹里さんです。

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