ガーゼオーマは現実?——ミスの隠蔽と発見型
ドクターX

【ドクターX】ガーゼオーマは現実?西園寺のミスとドラマの演出——"ミスの隠蔽と発見"型・現場で誰もが恐れる「数えなおし」の真実

『ドクターX』西園寺のガーゼオーマ描写は本当に起こり得るのか。実際の手術ガーゼカウントの仕組みと、ミスが起きる構造・発見される構造・隠そうとする構造を、現役26年の看護師が「ミスの隠蔽と発見型」として読み解きます。看護師現場で「隠したくなる瞬間」をどう乗り越えるかの4ステップ。すべてのミスは「カウント」と「正直」で防げます。

この記事の結論(カルテ)

  • 対象作品:『ドクターX』第3期・西園寺のガーゼオーマ(体内ガーゼ遺残)描写
  • 事象:手術後の体内にガーゼが残されたまま縫合される医療ミス
  • 本質:ガーゼカウントは存在するが、人間の集中力に依存する以上ミスはゼロにならない
  • 看護師現場の応用:器械出し・外回り・タイムアウトの3段カウント体制/ミス発見後の対応
  • 隠したくなる瞬間の4類型:保身/同僚を守る/患者を慮る錯覚/自分が信じられない
  • 読者への問い:あなたは「ミスを発見した自分」を責めますか?それとも「ミスを隠す自分」を恐れますか?

問診室:ガーゼオーマは「ドラマの誇張」ではなく現実に起こり得る

『ドクターX』で西園寺のガーゼオーマ描写を観た視聴者の多くは「ドラマだから誇張してるんでしょ」と思います。

けれど現役の看護師からすると、これは誇張ではなく現実に起こり得る、そして実際に過去にも起きてきたミスです。

日本でも欧米でも、年に複数件のガーゼ遺残(術中遺残物)が報告されています。

だからこそ手術室では、ガーゼカウントを術前・術中・術後の3回行い、複数のスタッフでクロスチェックする仕組みが整えられている。

それでもゼロにならない。

なぜなら人間の集中力にどうしても依存する作業だからです。

26年で手術室にも数年いたけど、ガーゼカウントが合わなくて全員が凍りつく瞬間を3回経験した

「12枚使ったはずなのに11枚しかない」と分かった瞬間、空気が止まる。

再カウントしても合わない。

本気で執刀医の手が止まる。

あれを経験すると、二度と気を抜けない。

怖いですね……。それで実際に体内に残っていたんですか?それともどこかに落ちていただけ?

3回とも、最終的には床の下や器械台の下から発見された

体内残留ではなかった。

でも一度カウントが合わなくなったら、X線撮影で確認するまで縫合は閉じられない。

手術時間が30分以上延びる。

患者さんの全身麻酔時間も延びる。

これは命に関わるリスクなんだ。

今回のテーマです。

「ミスの隠蔽と発見型」の核は、ミスは必ず起きる前提で、それをどう発見し、隠さず報告できるかの仕組みと文化

西園寺の描写が現実的なのは、人間がミスを犯す前提でドラマが作られているから。

回診記録①:実際の手術ガーゼカウントの3段構造

手術室で実際に行われているガーゼカウントは、術前・術中(閉腹前)・術後の3段階。

さらに各段階で「器械出し看護師」と「外回り看護師」の2人がクロスチェックします。

これは『ドクターX』では時間制限の関係で省略されますが、現実には何重もの守りが組まれています。

🩹 ドラマでの描写

カウントが省略されたり、ベテラン1人の感覚に頼って進められる演出。緊張感を出すために手順が簡略化される

🏥 現実の手術室

術前カウント/閉腹前カウント/術後カウントの3段。

各段で2人クロスチェック。

合わなければ即X線撮影。

手順は省略しない

3段階で2人クロスチェックなら、ほぼゼロになりそうな気がしますが、それでもミスが起きるんですか?

起きる。

緊急手術で時間との戦いの時、長時間手術で集中力が落ちる時、複数チームの引き継ぎが入る時——この3条件のどれかがあると、3段カウントですらすり抜けることがある。

だから「カウント+目視+X線」の三重守りでも、世界中で年に数十件報告されている。

西園寺のガーゼオーマも、おそらく長時間手術+緊急対応の二重条件で起きた設定。ドラマだから誇張ではなく、ドラマだから起こり得る最悪を描いたと読み直すと、視聴者の見方が変わる。

回診記録②:ミスを「隠したくなる瞬間」の4類型

看護師人生の中で、ミスを発見してしまった時に「隠したくなる衝動」を経験します。

これは個人の倫理観の問題ではなく、人間の防衛本能。

4類型を知っておくと、自分がその瞬間に立った時に対処しやすくなります。

隠したくなる動機看護師現場の典型例
① 保身型「報告したら自分が責められる」と思い、こっそり修正して済ませる
② 同僚を守る型「あの先輩のミスを表沙汰にしたら居づらくなる」とかばう
③ 患者を慮る錯覚型「患者さんを不安にさせたくない」を理由に、説明せずに済ませる
④ 自分が信じられない型「私の見間違いかもしれない」と思い込み、確認を取らない

「③患者を慮る錯覚」、これ良かれと思ってやっちゃいそうです。患者さんに余計な心配かけたくないって。

これが一番危険な類型。

「患者のため」と言いながら、本当は自分の説明責任を回避している

患者さんには事実を知る権利がある。

ミスがあったなら、それを言葉にする勇気を持つことが、長期的には患者の信頼を生む。

西園寺がガーゼオーマを巡って描いたドラマは、まさに4類型のいずれかに引きずられた人間が、隠蔽の連鎖を作る構造。これは医療現場だけの話ではなく、あらゆる組織で起きる人間心理の普遍構造。

回診記録③:ミス発見後の「正しい報告」3要素

ミスを発見した時、報告する側にも作法があります。

「事実だけを/早く/責任者まで上げる」の3要素

これを守れば、ミスは個人の問題ではなく組織の学びになります。

正しい報告には「事実だけ/早く/責任者まで」の3原則がある。

事実を装飾すると後で矛盾が出る。

報告を遅らせると被害が広がる。

中間管理職で止めると組織が学べない。

3つ全部やれば、ミスは「事故」ではなく「学び」に変わる。

「事実を装飾しない」が一番難しそう。つい「実は私もよく分からなくて」とか言い訳混ぜちゃいます。

分かる。

言い訳を混ぜた瞬間、報告の質が落ちる

「私が○時に発見した、内容は○、原因は○○の可能性、すでに○○の対応をした」だけでいい。

感情と事実を分けるのが報告の作法。

これができる看護師は、組織から本気で信頼される。

ミスを隠さず正しく報告できる組織は、結果としてミスが減る組織になる。

報告された事例から仕組みが改善されるから。

西園寺のドラマも、隠蔽より発見と報告の方が遥かに尊いことを示唆していた。

【本日の処方箋】「隠したくなる瞬間」を乗り越える4ステップ

ここまで整理した「3段カウント」「隠したくなる4類型」「報告3原則」を踏まえて、明日から実践できる4ステップにまとめます。手術室だけでなく、病棟・外来・在宅、あらゆる現場で使えます。

  1. ミスを発見した瞬間、深呼吸して「これは隠せるか」を1秒考えない:考え始めた瞬間に隠蔽の道が見える。発見=即報告のルールを自分に課す。
  2. 4類型のどれが自分を動かそうとしているか自問する:保身/同僚を守る/患者を慮る錯覚/自分が信じられない。正義の顔した隠蔽を見抜く。
  3. 報告は「事実だけ・早く・責任者まで」の3原則で行う:感情と事実を分ける。中間で止めない。装飾しない。
  4. 報告した後の自分を責めない:報告したあなたは正しい。組織を守ったあなたは、患者を守ったあなたと同じ価値がある。

「報告した後の自分を責めない」、これ大事ですね。報告した自分を「告げ口した」って思っちゃうことあります。

それは違う。

報告は告げ口ではなく、組織を守る職業行為

長く現場にいる看護師ほど、報告することの価値を理解している。

報告できる人が組織で重用されるのは、組織が報告に依存しているから。

これは長く続ける人の作法です。

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よくある質問

ガーゼオーマは本当に起こるのですか?

はい、実際に起こり得るミスです。

日本でも欧米でも、年に複数件のガーゼ遺残(術中遺残物)が報告されています。

手術室では術前・閉腹前・術後の3段階でガーゼカウントを行い、器械出し看護師と外回り看護師の2人でクロスチェックする仕組みがありますが、緊急手術・長時間手術・複数チーム引き継ぎの条件下では稀に発生します。

西園寺のミス描写はリアルですか?

かなりリアルです。

『ドクターX』はドラマだから誇張しているのではなく、ドラマだから起こり得る最悪を描いている、と読み直すと意味が変わります。

長時間手術+緊急対応の二重条件下で、3段カウントですらすり抜けるリスクがある現実を反映した描写と言えます。

ミスを「隠したくなる瞬間」4類型とは?

①保身型(責められるのが怖い)、②同僚を守る型(先輩のミスをかばう)、③患者を慮る錯覚型(不安にさせたくないと正当化)、④自分が信じられない型(見間違いと思い込む)。特に③は「正義」の顔して来るので最も危険で、本当は自分の説明責任を回避しているケースが多いです。

正しい報告の3要素は?

「事実だけを/早く/責任者まで」の3要素です。

事実を装飾すると後で矛盾が出ます。

報告を遅らせると被害が広がります。

中間管理職で止めると組織が学べません。

「私が○時に発見、内容は○、原因は○○の可能性、すでに○○の対応をした」と感情を分けて伝えるのが作法です。

隠したくなる瞬間を乗り越える4ステップは?

①ミスを発見した瞬間、深呼吸して「隠せるか」を1秒考えない、②4類型のどれが自分を動かそうとしているか自問する、③報告は3原則で行う(事実だけ・早く・責任者まで)、④報告した後の自分を責めない(報告は告げ口ではなく組織を守る職業行為)。

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