「レスキューは待てない。今ここで抜く」。
『コード・ブルー』1stシーズンで、視聴者に強烈なインパクトを残したエピソードがあります。
それは、ガス爆発事故の現場で、腹部に鉄筋が突き刺さった作業員・横山浩輝の救出劇です。
今回は、藍沢耕作が下した「現場での開胸」という究極の決断と、極限状態での医療判断について回診します。
この記事の結論(カルテ)
- 対象: 1stシーズン 第5話「過去」
- 患者: 横山 浩輝(演:山崎 裕太)。工場解体現場の作業員。
- 事故状況: ガス爆発により、壁から飛び出た鉄筋が腹部を貫通し、身動きが取れない状態。
- 処置: レスキュー隊の到着を待つ時間がないため、藍沢がその場で開胸し、大動脈を遮断しながら鉄筋を抜去した。
- 見どころ: 震えて動けない白石(新垣結衣)に対し、冷徹なまでに冷静な藍沢の対比。
問診室:鉄筋が刺さったまま…どうする?
お疲れ様、ゆめこちゃん。今日は外傷の勉強?
はい! 『コード・ブルー』の横山さんの回を見返してたんですけど、あれは怖すぎます! お腹に太い鉄の棒が刺さってるんですよ!? 私なら見た瞬間に腰抜かしちゃいます。
当時の白石先生もそうだったね。あまりの惨状に足がすくんで、何もできなかった。でも、藍沢先生は違った。「レスキューを待っていたら助からない」と判断して、その場でメスを握ったんだ。
黒田先生の電話指示があったとはいえ、薄暗い現場で、しかも独断で鉄筋を抜くなんて…。あの時の藍沢先生の集中力、人間離れしてました。

回診記録①:「修羅場でのダメージコントロール」を学ぶ
症例1:抜くか、抜かないか
通常、刺さった異物は「抜かずに固定して搬送」が鉄則だ。抜いた瞬間に大出血して死に至るからね(タンポナーデ効果)。
でも、横山さんの場合は「壁と繋がっている鉄筋」だったから、抜かないと搬送すらできなかったんですよね。まさに究極の選択です。
回診記録②:「鉄筋を抜くか抜かないか」のプロトコル
鉄筋が腹部を貫通した患者を見て、素人は「すぐ抜きたい」と思います。けれど医療者は「抜くことが命を奪う可能性がある」と知っています。鉄筋が血管を塞いでいる場合、抜いた瞬間に大出血で死亡。これがダメージコントロールの基本——「目の前の異物を急いで取らない」判断力です。看護師の現場でも、急変対応で同じ判断力が問われます。
「鉄筋を抜くか抜かないか」って、一般人なら100%抜くと答える。でも抜いたら死ぬ。これが医療者の世界。「目の前の異物を取らない」判断は本能に逆らう。
本能に逆らう判断って、訓練しないと無理ですよね。藍沢たちは普段からそれを訓練しているからできる。
そうです。「修羅場のプロトコル」は事前の訓練だけが頼りです。本能で動くと間違う。看護師でも、急変時に「とにかく何かする」より「冷静に観察する」方が結果が良いケースが多い。本能を抑える訓練が、医療者の核心スキルです。
症例2:白石の涙と成長
この回は、白石先生にとっても大きな転機だった。現場の凄惨さに圧倒されて役に立てなかった悔しさ。それが後の「強い指揮官」へと成長するバネになったんだ。
何もできずに立ち尽くす白石先生に、藍沢先生が「手伝え」って声をかけるシーン、良かったですよね。厳しさの中にも、同じフェローとしての信頼を感じました。
※ここから先は、医療ドラマの感想ではなく、実際に看護師として働く立場で一度ちゃんと考えてみたい人向けの話になります。
回診記録③:「修羅場対応」は医療外でも応用可能
修羅場でのダメージコントロールは、事故現場・自然災害・家庭の緊急事態でも応用可能です。「目の前の異常を急いで除去しない」「全体像を把握してから動く」「専門家を呼ぶ判断」——これらは医療者だけの技術ではなく、危機管理全般の普遍的なスキルです。
「急いで動かない」って、修羅場では一番難しい。本能と逆。1秒の冷静さが命を分けるのは医療だけじゃなくて、家庭の緊急事態でも同じ。
家庭で子供が怪我した時も、親が慌てて動くより、まず全体像を見る方が重要なんですね。
そうです。「専門家が来るまで待つ」決断力は、医療外でも生死を分けます。救急車を呼んで5分待つ間に何をすべきかを知っておくと、家族を救えます。これは看護師の知識が社会に活きる場面です。
回診記録④:修羅場で固まってしまうのは普通のこと
重い外傷の現場に初めて立つと、多くの人が最初の数秒、頭が真っ白になると言われます。それは弱さではなく、ごく普通の反応です。
動けるようになるかどうかを分けるのは、日ごろの訓練と手順の体への染み込み方です。固まったあとに動けた経験が、少しずつ自信になっていきます。
ドラマの医師は冷静に描かれますが、現実の医療者も、最初から落ち着いていたわけではありません。

【本日の処方箋】「修羅場」で足がすくまないために
災害現場や救急外来では、想像を絶する光景に遭遇することがあります。パニックにならず、目の前の命を救うためにナースができる準備とは?
対策:恐怖心に勝つ「プロトコル」
- 「最悪」を想定しておく
「血を見るのが怖い」ではなく、「大出血している患者が来る」と具体的にイメージトレーニングをしておきます。予測できていれば、ショックは軽減されます。 - 自分の役割に没頭する
「かわいそう」「怖い」という感情が湧いたら、すぐに「ルート確保」「バイタル測定」などの作業に意識を切り替えましょう。手を動かすことが心の安定剤になります。 - 声を出し合う
恐怖で固まりそうな時こそ、大きな声で「バイタル〇〇です!」と報告しましょう。自分の声を聴くことで、冷静さを取り戻せます。
💡ナースXのワンポイント・メモ
外傷初期診療ガイドライン(JATEC)や、病院前救護(JPTEC)の知識は、災害時だけでなく日常の急変対応にも役立ちます。
「何をしていいか分からない」という不安は、知識と技術で埋めることができます。
白石先生も最初は普通の女の子だったんだよね。そこから逃げずに現場に立ち続けたから、あんなに強くなれた。
はい! 私もいつか、後輩が怖がってたら「大丈夫だよ」って背中を叩いてあげられるようになりたいです。
(でも、鉄筋はやっぱり怖いです…)
それは正常な反応だよ。怖さを知っている人の方が、慎重で良いナースになれるからね。
凄惨な現場を見るのが辛い…
「血を見るのがどうしても苦手になってきた…」
救急現場の過酷さに、心が悲鳴を上げていませんか?
世の中には、外傷処置が少なく、落ち着いて患者さんと向き合える「慢性期病院」や「クリニック」もたくさんあります。
無理に克服しようとせず、あなたの適性に合った場所で輝きませんか?
救急の現場は特殊だ。向き不向きがあって当然だし、『怖い』と感じるのは命を大切に思っている証拠だよ。
もし今の現場が辛いなら、君のその優しさを、もっと穏やかなケアを必要としている患者さんのために使ってほしいな。
逃げるんじゃなくて、適材適所を探すんだよ。
\ 落ち着いて働ける職場を探す /
※今すぐ転職する必要はありません。
「今の職場が普通かどうか」を知るだけでもOK。
横山さんの命を繋いだのは、藍沢先生の技術と、現場スタッフの連携でした。
どんな状況でも、目の前の患者さんを諦めない心を持ち続けたいですね。
ねえねえ、みなさんは現場で「足がすくむような体験」をしたことはありますか?
「凄惨な事故現場で…」「初めての急変対応で…」など、どうやって乗り越えたかも含めて、こっそり教えてください!コメント欄は荒れちゃうと怖いので、下の「ナースXへの直通ポスト」から待ってます!
※明日から行かなくていい。とにかく心と体を休ませることが優先と感じている方。
「職場の人間関係がツライ…」「ドラマのあのシーン、どう思った?」など、誰にも言えない本音をナースXとコウ先輩に送ってみませんか?
いただいた相談は、ブログ内で回答させていただくことがあります(匿名でOK!)。
この記事は、フジテレビ『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』公式サイト、日本救急医学会「外傷初期診療ガイドライン」等の発信情報を参考にし、当サイトのコンテンツ制作ポリシーに則り作成しています。
看護師キャラが歌う、医療ドラマの“その後”
ドラマの外の病棟にも、言えなかった気持ちがあります。NURSE SOUNDTRACKは、白髪ナースのひかる・男性看護師のニコ・医師のツグ先生の3人が、現場の気持ちを歌にしている縦動画シリーズです。映像と音声はAIで制作していますが、内容は看護師の経験をもとに作っています。
